1456  今月は電子書籍のご紹介です(紙媒体での販売は現時点ではありません)。  著者は福田素子先生! 『小児看護』で「花咲け! ななこ」の作・画を担当され ている福田先生は,これまでにも医療系漫画に数多く取り組まれています。院 内学級を題材とした『空への手紙』,筋ジストロフィーの女性を描いた『言えな かったありがとう(『臨牀看護』009年5月号で紹介),ほかにも各種月刊誌に たーくさん。  「福田作品なら♪」という期待に十分応えられる『あの輝きの向こう〜見えな い,聞こえない,話せない,でも負けない!〜』。実在の重複障碍児の誕生〜 成人までのドキュメンタリーコミックです。『小児看護』014年7月臨時増刊号 のテーマは“小児の在宅看護;子どもと家族を主体とした支援”でしたね。併せ て読んでいただくと小児の在宅看護についていっそう考えが深まると思います。  さて本作品は,1992(平成4)年に誕生した重複障碍児・晶(あきら)ちゃんの 成長および家族の暮らしを,母親であり看護師でもある千代美さんが語るスタ イルで進行していきます。  晶ちゃんの姉が「あきちゃんは,おなかがすいているときはちょっと顔がち がう」(31ページ)と,親にもわからない小さな変化をとらえたり,学童保育所 の土地と建物の提供者がひょんなところから現れたり(80〜85ページ),医師に 「見えない・聞こえない」と言われた晶ちゃんが成長するにつれ、「見えている・ 聞こえている」としか思えない反応を示すようになり,ついには特別支援学校 高等部を卒業して家族旅行を楽しんだりと,本当にそういうこと,ある!」「現 場は医師の言う“無理”を超える!」という名場面が満載です。  さらにこの漫画で特筆すべきは「晶ちゃん物語」で終わらないこと。  晶ちゃんのパパとしてより,むしろ千代美さんの夫としての存在感が大きい 克比虎(かつひこ)さんはなんと魅力的なことか。晶ちゃんの姉の人生も添え物 的な扱いでなく丁寧に描かれています。晶ちゃんの成長を軸にストーリーが進 行していくとはいえ,神鳥家まるごとの物語になっているのです。  そこには「障碍児をかかえる家族だから」という特異的な状況よりむしろ,子 どもが成長する際に生じる悩みや戸惑いなど,普遍的な部分が多く盛り込まれ ています。読者は神鳥家の物語を追いながら,自らの家族や価値観について考 える機会にもなるでしょう。  今回,看護系絵本堂では初めての電子書籍のご紹介で,紹介する私も時代の 流れを感じます。電子書籍には利点がたくさんあります。①紙媒体と電子書籍 の両方がある作品なら,たいていの場合電子書籍のほうが安価,②小さな字も 自在に大きくできる,③寝転がって読んでも本の重さを負担に感じない,④電 子書籍にはお試し版ほか無料配信のものがある,など。  「いつかは…」と思いつつ電子書籍は食わず嫌いだった方,挑戦も兼ねて,こ の機会に本作品を get してはいかがでしょう。 第31回 あの輝きの向こう 見えない,聞こえない, 話せない, でも負けない! キーワード●重複障碍児,口唇口蓋 裂,心室中隔欠損,両 眼虹彩欠損,高度難聴 文化的背景●日本 その他●小学生〜成人向き,203頁 著者 / 福田素子 取材協力 / わかばクラブ 発行:双葉社,2014年 定価:本文下参照 【販売価格】ソク読み:PC,Android,iPhone,iPad;360円 / 閲覧期間180日,540円 / 閲覧期間無期限 amazon:Kindle 版;500円 楽天ブックス:電子書籍リーダー,Android,iPhone,iPad;500円