ちょっと何かが物足りない気分になる。
マンションに住むようになってから、それに気付いた。
雨の降る音がしない。
夜明け前から降りはじめた雨の音で目覚める事がない。
雨が連れてくる風の音が通り過ぎることもない。
かなりの土砂降りでも、遠く向こうで聞こえている。
台風の夜でさえ、無事に通り過ぎてくれるのだろうかという心配さえも。
実家では私の部屋は東向きの二階にあり、
台風の雨風が正面から吹きつけ、鉄線の入った厚い窓ガラスを軋ませた。
外の様子を窺っていると、突然の停電で付近一帯が真っ暗になる。
一瞬の不安の後、チラチラと回復し、どこかでホッとする。
雨の音は、そのまま自然の力の象徴だったのかもしれない。
今日も、冬の寒さをつれてくる静かな雨が降っていた。
朝一番に窓を開け、湿った冷たい空気を室内に入れ、雨の音を聞いていた。
屋根やコンクリートに降る雨の、いくぶん硬い音。
雨の降る日は、物足りなくも、わりと好きだ。
